奥利根 本谷山(1860m)、小穂口山(1526.0m) 2014年5月3〜4日  カウント:画像読み出し不能

所要時間

5/3
3:55 三国川ダム−−4:48 十字峡(アイゼン着用)−−5:48 丹後山登山口−−6:29 本谷山登山口(休憩) 6:45−−8:56 1296.8m峰(休憩) 9:29−−11:12 県境稜線−−11:44 本谷山(幕営)

5/4
4:52 本谷山−−5:29 1380m鞍部−−6:10 1410m鞍部−−6:31 小穂口山(休憩) 7:02−−7:13 1410m鞍部−−7:30 1502m峰−−7:50 1380m鞍部−−9:08 本谷山(休憩) 10:09−−10:24 県境稜線を離れる−−11:22 1220m肩(雨量計)(休憩) 11:45−−12:42 本谷山登山口(休憩) 13:26−−14:01 丹後山登山口−−14:46 十字峡(休憩) 15:02−−15:54 三国川ダム

場所群馬県みなかみ町
新潟県南魚沼市(旧六日町)
年月日2014年5月3〜4日 幕営
天候5/3 晴後ガス、雨
5/4 快晴
山行種類残雪期
交通手段マイカー
駐車場三国川ダムに駐車場あり
登山道の有無県境の1770m峰まで登山道あり。その先は道無し
籔の有無1770m峰東の1740m鞍部から本谷山間は笹藪だが踏跡あり。本谷山から小穂口山間はたぶん灌木藪だがほとんど残雪が利用できた
危険個所の有無無し
山頂の展望本谷山:立木皆無で展望良好
小穂口山:立木のある西側以外は良好
GPSトラックログ
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コメント本谷山から小穂口山を往復。三国川沿いの林道は予想より危険度は低くかったがピッケル+10本爪以上のアイゼンは欲しいところ。林道以外は稜線の籔を避けて急斜面トラバースをしなければ危険個所は無し。本谷山〜小穂口山間の9割以上は残雪が使えた。初日の午後から夜半にかけて寒冷前線の通過で雨が降り、翌朝は冷え込んでテントはバリバリに凍りついたが日中は快晴で素晴らしい展望が楽しめた


ルート図。クリックで拡大


三国川ダム駐車場。先客の車は1台 三国川ダム車止め。施錠されている
十字峡の一角に到着 売店前も雪解けが進んでいた
中ノ岳登山口 銅倉尾根へはトンネルを潜るが今回は入らない
トンネル入口から左の林道へ。雪が少ない ここでアイゼン装着、ピッケルを手にする
奥のデブリが最初の難関 最初の難関を通過、振り返る
次の難関。これ以降は丹後山登山口まで安全 林道上だが半分渡渉
三国川右岸に渡る橋。このすぐ先が丹後山登山口 丹後山登山口。古い足跡はここまで
なおも三国川沿いの林道を進む 林道で一番の危険ポイント。でも歩いたらそうでもなかった
本谷山への夏道がある尾根 橋で休憩。ダムから約2時間半
登山口不明で適当に尾根に上がる すぐに夏道登場
イワウチワがたくさん咲いていた 石楠花も満開
しばし急な夏道を登る コブシ(だと思う)
下津川山 中ノ岳
本谷山はまだ奥の方。雪が少なそう・・・
下津川山〜裏銅倉。ネコブ山は裏銅倉の奥で見えない
尾根が広い部分は残雪 尾根が狭まると夏道
1030m付近
桑ノ木山も見えてきた。たぶんあちらは賑わうだろう
1180m付近 1220m肩。雨量計あり
1220m肩から見た1296.8m峰
1296.8m峰 1296.8m峰から見たこれから歩く尾根
1296.8m峰からの展望(クリックで拡大)
1296.8m峰を振り返る しばし雪が続きそうと思ったが
痩せた区間は雪が落ちていた 1370m付近から再び残雪
1296.8m峰を見下ろす 1530m以上は雪がほぼ無い
1620m肩の展望(クリックで拡大)
夏道はきれいに刈り払いされている カタクリの花
登ってきた尾根を見下ろす
1770m峰で県境稜線に出る。夏道はここまで。本谷山まで基本的には道無し
1770m峰から見た荒沢岳
1770m峰から見た南側の展望(クリックで拡大)
踏跡明瞭な痩せ尾根を本谷山向けて進む
振り返る
尾根が広がると踏跡は薄まり笹に覆われる 本谷山山頂
本谷山山頂標識 山頂東直下の一段下がった雪田で幕営
本谷山からの360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
本谷山から見た下津川山と小沢岳
本谷山から見た荒沢岳東尾根の西ノ城。先週撤退した1610m峰もはっきりと見えた
午後はガスり夕方から夜半は雨が続いた 翌朝のテント
表面は雨粒が凍っていた 坪入山付近から朝日が上る
日の出の時刻の本谷山360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
軽装で小穂口山を目指す アイゼンを効かせて南尾根を下る
1810m肩は籔が出ているが歩きやすい 1680m付近
1680m付近からしばし西を巻いた(帰路は尾根上を歩いた) 1610m付近
1590m付近から見た小穂口山への尾根
1490m肩へと下っていく たぶん昨日の熊の足跡
爪の跡までしっかり残っている 1490m肩
雪は1490m肩から南へ落ちる尾根へ続く 1490m肩から東尾根は灌木藪
灌木藪を下る 北側に下って雪にありつく
ここで南側の雪に乗り換え 越後沢左俣にかかる滝。かなりの水量
1380m鞍部から見た小穂口山
1380m鞍部から見た本谷山
1420m峰は北側の雪を利用 1450m峰への登り。途中で西側に移る
1450m峰西斜面をトラバース 1502m峰への登り
往路は西斜面を巻いたが足に負担がかかりすぎた 1460mで尾根に戻る
このピークが小穂口山 1410m鞍部と雪に埋もれた池らしき凹地
湿地マークの広い斜面を登る 1451m峰につながる尾根に乗る
小穂口山山頂。背景は平ヶ岳 小穂口山から見た奥利根湖湖面
小穂口山から見た奥利根湖へ落ちる尾根
小穂口山から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
長い帰り道の開始 1410m鞍部。2重山稜になっている
1502m峰へ登る 1502m峰てっぺん
1502m峰見た展望写真(クリックで拡大)
1450m峰へ登り返し 1450m峰てっぺん付近で西斜面トラバース
本谷山が遠い
1380m鞍部から本格的登り返し開始
1490m肩へと登る 1490m肩直下。往路は籔の中を下ってきた
帰路は1490m肩南を巻いて南尾根に出た 最後は雪庇崩壊地から南尾根へ
南尾根を登る 1490m肩
熊の足跡に導かれ・・・・ 1560m付近の大岩は東を巻く
好天で気持ちいい雪原だが苦しい登りが続く
雪が切れた部分は短いので尾根上を登った 我慢の登り
越後沢山方面からの登山者 本谷山までもう少し
到着! テントは飛ばされていなかった 越後沢山方面へ進んだ足跡あり(前日のもの)
本谷山からの360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
駒の湯から縦走してきた男性 次に2名が続く
こちらも本谷山から下山。下りなら笹も楽ちん こんな短い笹ばかりなら県境稜線歩きも楽なのだが
痩せ尾根区間は道が明瞭化 1770m峰到着。県境稜線とおさらば
1級の夏道を下る 下津川山方面へ灌木籔漕ぎ中の先頭男性
2番手の男性 しんがりの男性
1530mで待望の残雪。アイゼン装着、スピードアップ 雪が消えてアイゼンも脱ぐ
1296.8m峰へ登り返し ショウジョウバカマ
1220m肩の雨量計 残雪の下りは足にやさしい
夏道の下りは大ザックだと足への負担が大 尾根末端
林道の登山口。小さな標識あり 林道歩きが一番危険。ここはマシな区間
最大の難所を高巻き 丹後山登山口通過
新しい足跡登場。十字峡方面に下っている 2か所のデブリが最後の難関
先行していた男性。前橋の猛者だった 十字峡到着
三国川ダム車止め到着


 奥利根領域で群馬県側に飛び出した山がいくつかあるが、小穂口山もその1つ。本谷山から南に派生する尾根上にある。末端から登ろうにも奥利根湖が邪魔して船でも使わない限りアプローチは不可能なので、常識的には本谷山から往復するしかない。もちろん登山道は無く藪に覆われているはずなので、現実的には残雪期限定だろう。

 ネットで事前調査すると数は少ないが(たぶん1件)ヒットあり。すかいさんの記録だ。今回の私の計画同様に本谷山から往復しているが、特に危険個所の記述は無いので大丈夫らしい。すかいさんは3泊4日で十字峡を起点として丹後山経由でピストンしていた。私の場合は三国川沿いの林道を奥まで歩いて本谷山西側の1770m峰に登り上げる予定で、丹後山と越後沢山は通過しないので2日あれば大丈夫と踏んだ。

 登山口は十字峡。三国川ダムに上がると平成23年の大雨で道路が崩れ、施錠された車止めあり。たぶん観光シーズンが始まれば入れるようになるのだろうが今は十字峡まで1時間歩くしかない。今日は午後から寒冷前線の通過が予想され、早い時間帯に上がって雨が降る前に幕営体制を整えたいのでまだ真っ暗な中を出発。駐車場の車は1台、ダム管理棟より少し手前の駐車場には2台の車があるだけ。連休後半初日だが夜明け前だからなぁ。今日入山予定の登山者の多くがまだ到着していないのだろう。

 本日の冬装備はピッケル、おニューの12本爪アイゼン。先週の雪の状態、その後の天候よりワカンは不要と判断した。ただ、寒冷前線通過後の気温が心配で防寒具は多めに持った。シュラフは冬用。水作りのためにガスは多め。まだテントが新しいので水漏れの心配はないのがいい。登山靴は昨年購入したものが水漏れするので新調したが、ワックスを塗れば1日くらいなら水漏れしないこと、新調した靴は今のものより100gくらい重いことから古い靴を使うことにした。アイゼンが合うかも事前に確認済み。

 真っ暗な舗装道路をヘッドライトを点けて歩く。豪雨で崩壊した谷は整備され舗装も新しくなっていた。残雪は少なく、途中で車の通行は不能だが歩く分には雪を踏まずに十字峡まで歩けた。売店付近の雪も少なかったしトンネル入口や三国川沿いの林道の雪も少ない。この頃には周囲は十分明るくなった。

 林道に入って200mくらいで雪の上に乗りアイゼン装着。1人分の古い足跡がある。登山者のものか釣り師のものかは不明。丹後山の経験から林道で危なっかしいトラバースは最初の方の2箇所と分かっていたので気が楽だ。どちらも谷から押し出したデブリを乗り越える場所だが、デブリはでこぼこが多く足の置き場に困らないし滑落のリスクが減るのが助かる。2つの大きなデブリの山を越えればその後は大した危険個所は無く丹後山登山口到着。古い足跡はここまでだった。

 この先は私も未知の領域。これまでと同程度のトラバース、高巻なら問題なし。出だしからしばらくは大した危険は無くデブリを乗り越えたり雪が解けた道路の端を転落に注意しながら歩いたが、林道が右カーブして北側斜面を通過する場所が今回の林道歩きで一番の危険個所だった。傾斜がかなりきつく、雪の末端は沢の中に落ちて壁になっている。壁よりも上部を高巻きする必要があるが、遠目にはかなりの傾斜に見える。落ちれば川にドボンだ。少し緊張して高巻きにかかるが現場を歩くと見た目よりも傾斜は緩く、アイゼンはよく利くしピッケルで万が一に備えて歩けばそれほど緊張せずに済んだ。危険個所を通過後も少し傾斜がきついトラバースがあったが距離も短く難なく突破。左に緩やかに曲がれば登山口のある尾根末端が見える。乾いた橋の上で休憩。

 雪に埋もれて尾根のどこに登山口があるのか分からなかったので尾根末端から取り付く。この高さは藪も無く適当に登っても問題なしだが、少し上がるとかなりの傾斜で巻かないと登れそうにない。右の方が巻きやすそうだと考えながら登っていると雪が消えた斜面で道らしき筋発見。上ではなく右に上がっている。少し辿ったが間違いなく夏道で一安心。

 しばらくは雪がない急な夏道を上がっていくため、すぐにアイゼンを脱いだ。荷物が重いので足にきつい。天気がいいのは助かるが気温が高く暑さを感じるくらいで、スパッツを脱いでズボンの裾を捲り上げ、上半身はTシャツ姿、顔には日焼け止め。夏道はよく手入れがされて藪が邪魔な個所も無く良好だ。谷を挟んだ反対側の銅倉尾根との高さの差が徐々に無くなってゆく。

 斜面に雪が残るようになっても尾根上は道が出ている状態だったりするが、標高970m付近から残雪がまとまって現れる。つぼ足でもほとんど沈まず快適。何よりも周囲が雪だと涼しいのがうれしい。このまま雪が続くのかと思ったらそうでもなく痩せ尾根区間は夏道歩きだ。

 標高1220m肩(小ピーク)では電柱とプレハブ小屋が立っていた。雨量計らしい。遠めに見ると平屋建てに見えるが接近すると1階部分は雪面の下であったので、ここでの積雪は3mくらいらしい。そろそろ休憩したいところだが次の1296.8m峰までがんばって歩いててっぺんで休憩。ここも雪に覆われて展望のいい場所だった。この時間帯だと銅倉尾根を登っている登山者も多いだろうな。あちらは相変わらず真っ白な稜線で、ある程度高度を上げればネコブ山まではずっと残雪歩きだろう。

 休憩を終えて出発。ピークの下りも残雪に覆われアイゼンを利かせてグイグイ下る。尾根上は残雪で横になったブナの枝が邪魔したり。雪が消えてしばらくすれば立ち上がって障害物ではなくなるだろう。鞍部から登りにかかると雪が消えて夏道歩き。足が重い。標高1380m付近からは尾根が広がって広範囲の残雪帯が登場、アイゼンをつけて登っていくが、足に疲れが出てまっすぐ上がるのはきつく、ジグザグを切って登っていく。振り返ると休憩していた1296.8m峰は顕著なピークを見せていた。銅倉尾根に人の姿が見えるかもと思ったが、この距離では人間の姿は芥子粒にもならず判別不能だった。右奥の下津川山から本谷山にかけての県境稜線北斜面はかなり雪が消えてしまっている。前回よりも1週間遅い時期だからというのもあるだろうが、今年のこの辺りの残雪は少ないようだ。

 1530m付近で尾根が狭まるとまた夏道歩きでスパッツ、アイゼンを脱いで急な尾根を登っていく。これ以降、まとまった雪は本谷山山頂付近まで登場しなかった。ここまで来ると尾根上には高い木は存在せず常時展望を楽しめる。振り向けば八海山が三角形の姿。この方向だとギザギザした稜線が一直線に重なって見えるようだ。その右手は中ノ岳。この付近では一番高いピークだ。兎岳を経由してなだらかな丹後山、そして越後沢山と続く。兎岳の右手には荒沢岳と東尾根。先週登った西ノ城とその西側の1610m峰も識別できた。

 やがて県境稜線の1770m峰に到着、夏道はここまでだ。ここは藪が切れて幕営にちょうどいい場所であるが、まだ時刻が早いので本谷山へと向かう。県境稜線上には人の姿は見えなかった。ここから下津川山までの間はかなり藪が出てしまっていて、雪が使えるのは5割程度ではなかろうか。雪の上に人がいれば判別できると思うが藪の中だと見分けるのは不可能だ。

 本谷山方向は少しの間は痩せ尾根でアルプスの森林限界のような植生であるが踏跡がしっかりしている。鞍部から登りにかかると尾根が広がって一面の笹原。でも尾根上は雪は無く南にずり落ちたところだけでしばらく雪は使えない。でも笹原の中にうっすらと踏跡ありで、まっさらの笹薮歩きよりずっとマシだ。それに笹も背の高い笹ではなく腰の高さほどで密度もそれほどではない。県境稜線がずっとこんな状態ならば無雪期でも楽勝で歩けるのだが、実際は潅木区間があったり、巻機山からの下りは背丈を越える高密度の笹で、よほどの根性がない限りは無雪期はやめた方がいい。

 笹原を登っていくと右手に雪田が現れるので踏跡を外れて雪の上へ。さすがに笹はそれほど濃くないとは言っても雪の上の方がずっと楽だ。傾斜が無くなって一段高いところに笹が現れるとそこが本谷山山頂。立木皆無で360度の展望あり。地面に刺さった手製標識あり。ここからは最終目的地の小穂口山も見えるが遠いし低い! 尾根上の最低鞍部までここから400m以上も高度を落とすのだから。

 時刻はおおよそ正午。ここで今後の行動を考える。ラジオの天気予報では昨日から変わらず寒冷前線の通過で一時的に大気の状態が不安定になってにわか雨か雷雨の予報、新潟中越地方の午後の降水確率は40%。まだ晴れているが北の空は怪しげな雲行きである。明日の行動を楽にするためこのまま進んでもいいが、その場合、地形図を見た感じでは最低鞍部から先に進まないと幕営できそうな広く平坦な場所はなさそうだ。そうした場合、明日は重い幕営装備を背負って標高差400m強を登り返すことになる。どうせまた本谷山に戻ってこなければならないのなら、このまま本谷山山頂で幕営するのが得策と考えるようになった。幸い、本谷山山頂部東側は一段下がった場所に平坦な雪田があり、寒冷前線通過後に予想される強い西寄りの風を避けることができそうだ。今日は気温が高いし今は日中で雪が緩んで足は重い。足の疲労も溜まっているし、ちょっと早いがこのまま幕営することにした。

 テント設営に適した場所は雪田端で、雪を均してテントを置き、笹の斜面にペグを打ち込んでテントを固定、これで明日小穂口山を往復している間にテントが飛ばされることもないだろう。まだ頭上には太陽が強く輝きテント内は暑いくらいで水作りで使用するガスの量は少なくて済んだ。午後2時くらいからガスが掛かり始め、午後3時くらいからポツポツと弱い雨が降り始める。午後5時くらいからは風が強まり本降りの雨だが今のテントは昨年秋に購入したばかりで水漏れの心配はない。ただしシングルウォールなので表面が濡れて水の膜に覆われるとゴアの生地でもテント内部の水蒸気は外に出せなくなって内部が結露する。それが夜半になって凍りつきバリバリになっていた。朝の最低気温は-5℃くらいだった。

 風は一晩中吹きつづけ、雨も日付が変わるまで降り続いた。天気予報では短時間の天候の崩れと言っていたが、それは下界での話らしかった。たぶん前線が通過して一時的に弱い冬型になり、山の上だけに雲がかかっていたのではなかろうか。

 翌朝、風が続いて天候が心配だったが何となくテントの中が明るいと思って外を見ると星空! 天気予報が当たってくれた。日の出1時間前に起床、寒いのでシュラフに足を突っ込んだまま朝飯。水は半分凍っていて濡れタオルも凍結、-5℃だとこんなものだろう。外に出しておいたピッケルの紐はバリバリ。登山靴と靴紐は乾いていたので大丈夫。

 外に出ると雪は降らずにずっと雨だったようで新雪は見えない。テントの水滴はバリバリに凍っていた。雪も硬く締まって全く沈まない。これなら楽をして距離が稼げる。アイゼンを装着、ピッケルと最低限の装備を持って小穂口山へと出発。

 最初は広く緩やかな雪面の下り。1810m肩(小ピーク)だけ藪が出ているが、腰程度の高さの立った細い潅木で楽に歩ける。再び残雪に乗って広い尾根を下っていく。クラックが入って時々左右にルートを振るがまだ崩壊しそうな感じではない。次の藪が出た場所は大きく右を巻いたが、帰りに見上げると藪は大した距離ではなく素直に尾根上を歩いた方が楽だった。

 1590mで左に尾根が分岐するが主尾根はまだまっすぐ。ただしこちらは雪が落ちて藪が出ているのが見える。そこに突っ込むより左側の浅い谷の斜面を横断した方が楽そうに見えたので斜面に降りようとしたが既に遅し。雪が割れて垂直の壁と化しており下ることができないので尾根を進んだ。しかし大半の藪は右を巻いて回避可能。最後の藪の手前では熊の足跡が登場、エッジの丸みからすると昨日のものか。大きさからすると結構大物のようだ。私とは逆方向で登りだった。

 藪は大した距離ではなくすぐに尾根反対側の残雪に抜けて1490m肩に出たが、雪は主尾根ではなく南に落ちる枝尾根に乗っていて、そのまま雪を下るわけにはいかなかった。主尾根は両側に雪が落ちて潅木藪、ただし下り方向は根曲がりが順方向なので割と楽だ。とはいえ笹と違って潅木は硬いので厄介なのは違いない。左手の雪面が接近したところで雪に乗り移る。この雪も途中で亀裂があって進めなくなり、再び尾根を乗り越えて逆側の残雪へ逃げる。

 本谷山から見た限りでは藪が出ているのはここまでで、この先はほとんど残雪が使えるはずだ。最低鞍部から見上げる本谷山は高い! これを登り返すのは骨が折れそうだ。1420m峰は尾根上は藪が出ているが両側は雪が残っており、主に北側直下を歩いた。亀裂で行く手を塞がれると南に移る。次の1450m峰も最初は左側の雪を利用し、亀裂の雪壁が出たら尾根上の短い藪を突っ切って西側斜面に出る。次の1502m峰は登るのが面倒なので往路は西を巻いたが、それなりの傾斜があって足の筋肉の一部に集中的に負荷がかかって逆に足が疲れたため、帰りは素直に尾根上を歩いた。ここは尾根上も全く藪が出ていないので快適に歩ける。

 地形図で池マークがある1410m鞍部は2重山稜になっていて、その真中に池があるような地形だった。地形図だと尾根の西側に池があるように見えるがそうではなかった。どちらかといえば池の西側の尾根の方が広くて歩きやすい。

 地形図で湿地帯がある広い緩斜面は一面の残雪、1451m峰から続く尾根に乗れば最後の登り。広い雪庇に覆われた気持ちのいい尾根を登りきると小穂口山山頂に到着。

 それまでは尾根上は背の高いブナが中心だったが山頂付近のみ細い潅木などに変わっている。すかいさんの山頂標識があるはずと近くの木を探したが見当たらない。地形からしてここが山頂に間違いないのだが、年月が経過して落ちてしまったのかもしれない。せっかくなので赤テープを残したが、次にこれを目にする登山者は今年はいないだろうなぁ。来年も怪しいかも。それくらい訪問者が少ない山だろう。木があるのは西側だけなので東や南は展望がいい。意外に近くに奥利根湖の水面が見えるが、あそこはアプローチが無いので一般登山者には使えない。西に目を向けると真っ白な幽の沢山。イラサワ山は手前の尾根に邪魔されて姿を見ることはできない。利根川本流を挟んだ反対側は台地状の水長沢山。昨年山頂を踏んだ山だ。今年の雪の状態だったらあんなに苦労はしなかっただろう。赤倉岳も、そこから派生する日陰山も矢種山も見えている。

 本谷山から約1時間半経過しているので休憩。帰りは登りがあるから2時間半かなぁ。三国川ダムに到着するのは夕方近くになるかな。今日は天候が安定しているので暗くなるまで行動しても大丈夫だ。休憩を終えて長い帰路が始まる。

 最低鞍部から1490m肩への登りは往路の藪は使わず南斜面の残雪トラバースして南尾根に這い上がった。尾根には雪庇が張り出してそのままでは登れなかっただろうが1箇所だけ雪庇が崩壊して上がれそうな場所があったので、その亀裂から尾根に出た。その後は本谷山山頂までほぼ尾根通しを歩いた。昨夜と違って東寄りの風がやや強い。私のテントは西風を避ける対策はしてきたが東風は考慮していない。雪上なのでペグは利かずペグを雪に埋めて足で踏み固めておいたが、この時期の日中では雪が解けてペグが出ていると思う。西側は3箇所で斜面にテントを固定しているが、テントが浮き上がったらペグごと抜けてしまうだろう。地形の関係で東風が直接当たらないことを祈るばかりだ。

 山頂が近づくと越後沢山方面からの登山者の姿を発見、雪の上だと人間の姿が目立つ。私の方が早く山頂に到着、心配だったテントは無事だった。山頂部の足跡を確認したら越後沢山方向へ1人の足跡あり。私が小穂口山往復の間に通過したのかと思ったら、日の出の時に撮影したパノラマ写真にその足跡が写っていたので、少なくともそれ以前に通過した足跡だ。でも私が到着したときには無かったし、足跡の深さからして雪が締まった時間帯の通過ではないのも確実。となるとガスがかかり始めた昨日午後の通過だろうか。テントの中から気づかなかった。

 テントを片付けながら登山者の登場を待った。やってきたのは駒ノ湯から入山したという男性で、どうも昨年の大型連休で平ヶ岳付近で会っていたようだ。世界は狭いなぁ。男性は本谷山で休憩することなく下っていった。どこまで行くのだろうか。巻機山まで? その後は2人の男性が上がってきて、これまた休まず下津川山方向へ歩いていった。3人はパーティーなのか単独なのか不明だが、先頭の男性は単独で後ろ2名はパーティーのように感じた。

 濡れたテントの虫干しを兼ねて長い休憩の後出発。通過した3人は既に1770m峰に達し、先頭の男性はその先の雪田末端まで行っていた。しばらくアイゼンの出番は無いのでスパッツもつけずに出発。最初だけ雪の上だがすぐに笹の尾根の踏跡に乗る。鞍部から痩せた尾根を通過して1770m峰。先行登山者の姿はもう無い。私はここで県境稜線と分かれて下山だ。尾根の途中からは藪漕ぎ中の3人の姿が見られた。短い区間の雪の上には昨日の私の足跡しかなかった。

 1530m付近で雪にありついてからはアイゼンを効かせて一直線に下る。新しいアイゼンはまだ歯が長く食いつきが良すぎて滑らないのでこんな楽しい下りではちょっと不利か。尾根が痩せるまで残雪歩きを楽しんで、夏道でアイゼンを外して歩く。1296.8m峰の登りはやっぱりきつい。ピークを通過してプレハブ小屋で休憩。最後のまとまった雪が終わり夏道歩き。やっぱり雪がないと足への負担が大きく、今日のような大ザックだといっそうきつい。先週は荒沢岳東尾根を幕営装備を担いで体力的にはそれなりのトレーニングになったはずだが、今回の下山の翌日にひどい筋肉痛になった。

 尾根末端で夏道の続きを確認しようと周囲をきょろきょろしつつ下っていくと、夏道は最後は末端より西側に下っていた。尾根末端から50mくらい入ったところが登山口だったが、今は雪が付いて道は見えない。木に付けられた小さな手製標識だけが目印となっていた。

 あとは林道歩きだが危険度では稜線上より危ない場所。ただ、往路を歩いて危険の度合いと場所が判明しているので帰りは気楽。最初で最大の難所も往路と同様、遠くから見るより現場を歩くと大したことはなかった。丹後山登山口からは下山の方向に新しい足跡が登場、単独らしい。登り足跡はなし。というか、早朝に入山だと雪が締まって足跡は残らないか。

 林道を進んで十字峡が近いづいて最後の難関、2つのデブリの1つ目で先行の登山者に追いついた。手にはピッケルではなくリング無しのストック、アイゼンも12本爪ではなく6本爪。さすがにこの装備だと進行速度は落ちるだろう。難所の手前で私が先行、こういう場所はステップを切ってやりたいがデブリは硬くてステップは切れない。ただしでこぼこが多いので引っかかりやすく滑落しづらいとも言えるが。

 2つ目のデブリを越えればもう危険個所はなし。道路端を歩けるようになればもうアイゼンは不要だ。林道に降りてから十字峡までノンストップで歩いてきたので男性がやってくるまで休憩。ダムまで約1時間の退屈な時間を話しながら歩けたのは助かった。この男性は前橋在住とのことで、この時期は藪がひどいエリアばかり登っているとのことで私と同じ考えだった。雪が無い時期はトレーニングがてらに赤城山のあらゆる尾根や沢を登っているとのこと。奥利根は尾根歩きばかりでなく沢もやるとのことで、私が昨年登った水長沢山や日陰山の尾根末端まで下って、利根川を横断して小穂口山の尾根を登ったりと、凄いことをやっている人だった。この時期の利根川はスノーブリッジは無く、上流部は水に漬かりながらもどうにか渡れるが、ある程度下流になると泳いで渡る状況だとか。流されて浅瀬に這い上がったこともあるとのことで、完全にエキスパートの世界だ。装備はできるだけ軽量化し、ピッケルの代わりにリングが無いストックにピッケルのブレードを小型にしたような金具を取り付けてダブルアックスのように使えるよう改造してあった。テントではなくツェルト、防寒具は雨具で代用、アイゼンは6本爪。私では真似ができない装備だ。kumo氏やDJFとはちょっと方向性が違うが、相当な猛者だった。群馬の変な山に登っていると出会うことがあるかもしれない。特に奥利根では。

 ゲートに到着、男性は管理棟より下の駐車場に車を置いてあるとのことでここでお別れ。管理棟前の駐車場はほぼ満車だったが、登山者の車の割合はどれくらいだろうか。少なからず中ノ岳や銅倉尾根から入っている登山者の車もあるだろう。

 車の荷物を整理して五十沢温泉の「さくり温泉健康館」へ。ここは料金が\370と安いのがうれしい。連休中だからか、子供連れでかなり賑わっていた。

 

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